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講義内容(森田先生)

「溶液界面のプローブ手法と分子シミュレーション」

 液体の界面は気-液、液-液、固-液と多岐にわたり、蒸発や凝縮はもとより、バブルやエアロゾル、抽出、相間移動触媒、結晶成長、電気化学反応など我々の身近にも数多くの例を見ることができます。しかし液体界面の化学を分子レベルで解明することは、バルク溶液や清浄固体表面の分子科学と比べても、これまで非常に限られてきました。それは液体界面を分子レベルでシャープに観測することが困難であったことに由来することが大きく、それだけに分子シミュレーションによる解明が必要とされてきました。
 私たちはその状況を乗り越えるために、界面選択的な振動分光の情報を計算化学の立場でフルに引き出す方法論を開発して、さまざまな溶液界面に応用してきました。そのためには界面分光の基礎的な理論を分子シミュレーションの俎上に乗せるための工夫が求められ、とくに分子モデリングのレベルから新たな開発が必要とされます。本講義ではそのための基礎的な方法論に重点を置いて説明する予定です。


講義内容(喜多先生)

「高分子溶液の温度勾配下における輸送現象」

 高分子溶液などソフトマテリアルの物性研究は、さまざまな手法やアプローチにより多大な成果を達成してきた。しかし、これまでの実験研究は、系が熱力学的に平衡であるという前提が多い。一方、非平衡状態では、物質の拡散や熱伝導などといった物質流やエネルギー流などの不可逆的な輸送現象が観察される。生体が絶えず温度勾配や物質流・エネルギー流などにさらされていることを考えると、生体分子(およびソフトマテリアル)の構造形成と機能発現を理解するためには、非平衡熱力学に立脚した物性研究が不可欠である。
 非平衡系では、系の成分分布が空間的に非一様で時間的にも変化している現象を調べる必要があり、考慮すべきパラメータが増えるために実験は困難となる。実際、報告されているデータは熱平衡系に比べて圧倒的に少ない。
 本勉強会では、溶液の非平衡系物性研究の切り口として、ルードヴィッヒ・ソレー効果(または熱泳動現象、熱(物質)拡散)を紹介させていただく。混合流体に安定な温度勾配を与えると温度勾配をドライビングフォースとする成分の拡散とフィックの濃度拡散とのカップリングにより安定な濃度勾配が形成される。最近になり、この現象を特徴づける拡散係数(非平衡系の不可逆的物質輸送係数)が実験で得られるようになってきたが, 複雑な分子間相互作用を有する水溶性高分子やミセル系などでは結果の解釈が困難なことが多々ある。
 参加のみなさまとの相互コミュニケーションにより、ルードヴィッヒ・ソレー効果の理解を深め、各位の研究との何らかの接点が生まれること目指したい。